屋久島(島一周の巻・『4時』から『10時』まで)

さて屋久島の二日目、前日は時折の雨の中、だの温泉だのにうつつを抜かしていたが、この日は雨も収まりまぁまぁの日和となった。
強風が吹きつけてはいたが、車で移動するなら問題ないだろうと、朝の8:30から島一周ドライブに出掛けたオレだった。

ちなみにオレの宿泊先は安房(あんぼう)という港町。島は割合と丸い地形なので、時計に例えるとちょうど『4時』の位置となる*1。ここから時計回りにて一周するのだが、あちこち見ながら凡そ5時間くらいだと宿で教わった。一本道だから迷子になることもあるまい。


出発して20分弱、『やまんこ湧水』という表示を見つけて寄ってみた。やまんことな、何があるのだ?

ただの泉だった。
漢字で書くと『山河湧水』となる。ただの泉とは言え、その昔は貴重な飲料水であり、地区の人々が大切に守ってきたものだ、と看板に書いてあった。屋久島の名水としても知られている、とのことである。
湧き水であればさぞや冷たいだろうと思い、手を浸してみたらぬるかった^^; オレの知っている湧き水は、基本的に冷たいものばかりなのだが、どうやら屋久島ではその知識が通用しないらしい。オレ、またヒトツ開眼である。こうしてオレの知識は増えていくのだな、・・・ほぼ役に立たないが。

元々が飲料水であるからして、飲んでも問題ない水であるとは思った。が、このぬるさでは飲む気は起きない、とりあえず車内にあった空のペットボトルで持ち帰り、宿で冷やして様子を見ることにしよう。
かくて本日のお土産、第一弾のゲットである。


さて、さらに南下すると『シドッチ神父上陸の地』という表示が出てきた。
オレ、この人知ってる。東京国立博物館に所蔵されている聖母画、通称『親指のマリア*2』を持ち込んだ宣教師だ。屋久島から潜入したとは知らなかった、見に行ってみよう。
細道を進んでしばらく行くと、行き止まりに石碑があった。

しかし、具体的にどの地点から上陸したかまでは、さすがに不明である。とりあえず海岸の写真でも撮っておこうか。

って、どっちを見ても断崖絶壁じゃん!
とても人がよじ登ってきたとは思えない、本当にここから潜入したのだろうか。宣教師であれば、かなりの荷物を持っていたはずである。それを担いで登れるような崖じゃないって^^;
かくて、オレ的にはかなり疑問が残る場所であった。


さらに車を進め、昨日訪れた大川の滝を過ぎた。
ここからは世界遺産登録地点となる*3、ちっと期待が高まるのだ。

まずはヤクザルがお出迎え、強風の中、道端で毛繕いをしている集団だった。
多少晴れ間が出てきたから、日当たりのいい道路まで進出してきたのだろう。まぁ猿なので、特にかわいいと言う感想も持たず、カメラに収めて通過した。


猿通過後、道路が悪路へと変化した。『西部林道』というヤツであり、まさに林道であった。対向車が来たらタイヘンだぞ、急カーブの連続だぞ、当然スピードは抑えめになるぞの三重苦で、オレの好まない道路である。
観光マップに依れば、『世界遺産で唯一、車の通行が可能なところが西部林道です』などと書いてある。本当にそうなのだろうか?


悪路で車の操縦をしつつしばし熟考。
・・・セレンゲティって確か世界遺産だよね? でもアソコ、サファリツアーやってるよね? 当然、四駆でバリバリ走ってるじゃん、・・・オフロードではあるけど。
・・・プラハ城も世界遺産に登録されているけど、衛兵が城内を車移動してるの見たぞ、・・・城内は石畳の道だったけど。しかも衛兵は特権的な階級かと思われ。
・・・王家の谷やハトシェプスト女王葬祭殿、あそこも世界遺産だけど入り口から車で移動したぞ、・・・遺跡内専用の電気自動車だったけど。
・・・ギザのピラミッドは? ガイド車で各ピラミッド間を移動したよね、・・・ピラミッド本体はともかく、周辺の土地まで指定を受けているとは限らないけど。
・・・忘れちゃいけないイースター島、島全体が世界遺産なのに舗装道路はあるし一般車もバンバン走ってるじゃん(^^) ・・・屋久島が登録された時点では、イースター島はまだ世界遺産ではなかったけど*4
・・・んじゃ白川郷は? シンクヴェトリルは? あと知床は? ・・・これってば確か文化遺産だったよね? んで知床は自然遺産だけど、登録年が割と最近だったハズ。


このようにオレの知る範囲でも、車が通行できる世界遺産はいくつかあった。多分、他にもあるだろう。すると西部林道が『世界で唯一』っての、烏滸がましくね? う〜むぅ・・・。


オレは深慮の結果、『世界で唯一、外部からの連続した舗装道路が通じており、一般車の通行が可能な世界自然遺産(ただし屋久島の世界遺産登録時点での話)』が正解なのではなかろうかと、そのように結論づけた次第である。
たかが観光マップとは言え、誤解を招く表現は慎むべきだと思う。ただし、オレの結論が正解かどうかの確証はない。もし正解だったとしても、オレの結論通りに記載すると『コマけぇんだよっ!』と文句が出るだろうけど。


と、くだらないことを考えているうちに屋久灯台に到着、西部林道のほぼ終着点である。林道通過といったイヤな時間を無難に過ごすには、小難しいがくだらないことを考えるのが一番だ。

1897(明治30)年に完成したと言うから、既に120年間も現役灯台なのだ、がんばっているんだな。
さっきまで晴れ間があったのに、また一転してどんより空。岬はさらに風も激しく、この日は寒々しい風景になってしまった。

海も大荒れである。

荒れた海の向こうには、口永良部島が見えた。


さて、屋久灯台は時計で言うと、ちょうど『10時』の位置となる。つまり安房からここまでで、島を半周したワケだ。
世界遺産に期待したのだが、半周の中で見たところと言えば西部林道のみ。しかも車をちょっと停めてってなスペースがほぼ皆無だったので、写真を撮ることもできなかった。もし対向車がやって来たら、相手に大迷惑だしね。ところどころ、ジブリ映画的な景色もあったのだが、やはりマナー優先と言うことで*5


とりあえずこの時点で、時刻は午前11時ちょい過ぎだった。前半の半周で3時間半ほどを要したことになる。
残り半周についてはまた次回、なので乞うご期待、である。

(2018/02/11撮影)

*1:時計に例える言い方は宿で教えて貰った。島特有の言い回しらしい。

*2:とても美しい宗教画だったので、オレの記憶に残ったのである。

*3:島全体が世界遺産、というワケではない。

*4:屋久島登録:1993年、イースター島登録:1995年。

*5:などと優等生発言をしてみるが、停車するのが面倒だったのが半分、残りは『いい景色かも』と思った時点で既にかなり後方になっていたと言う現実問題に依る。