名草神社三重塔(重要文化財)

兵庫県の山の中にとても優美な塔がある、という情報を得た。あちこちのサイトを検索して見ると、本当に美しい塔だった。これは是非行かねば!
しかし『山の中』の部分が引っかかる。どんだけ山の中なんだろうか? 地図を調べると、これまた本当に山のど真ん中。航空写真では、緑一色の中にポツンと塔らしき影が写っていた。
・・・マジかよ?


しかし地図上にも道が掲載されているし、航空写真でも道路の形跡が確認できる。道さえあれば行けないことはねぇだろ、大丈夫大丈夫、きっとダイジョ〜ブ〜♪ ってなノリで、旅程を作成した。

で、行ってきたワケであるが、結果的に言うと大丈夫であった。ただし、ある意味ダイジョ〜ブではなかった。


ダイジョ〜ブではなかった理由はコレ。

神社への道は道路であったが、オレはこのような道を『林道』と呼び、オレの中では道路扱いをしていないのだ。ここは一応舗装はされていたが、対向車が来たら一発アウト、しかもクネクネ道なので神経も使う。あまり好みではない道である。


でも他に道がないのだから仕方あるまい、コレを突破するしかない! で、クネクネ走ること30分少々にてようやく名草神社に到着。


おぉ! 聞きしに勝る美しさ!!
均整のとれた重層に屋根は杮葺*1、さらに反り返った軒先と、オレの好みを確実に押さえている。惜しいのは朱塗りの点だが、この姿であれば失点*2とはならない。イヤむしろ、この場合は加点要素である。


到着した時間もちょうどいいタイミングだった模様で、夕方の柔らかい陽射しが、塔をより美しく見せていた。光の角度もバッチリだ。

この塔は室町時代の1527(大永7)年に完成したのだが、本来は出雲大社に造営されたものである。
時は下って江戸時代、出雲大社の寛文御造営に際して、名草神社の山から杉を造材として送ったところ、その御礼としてこの塔を譲り受けたそうだ。
で、1665(寛文5)年に移築完了、この時は船で日本海を渡って、解体した塔を運んだとのこと。海からは人力で運んだそうで、と言うことはオレがクネクネ登ったあの道を使ったワケか。
なんとも壮大な話であり、また塔を御礼に使うとは優雅な話でもある。


さて名草神社を訪問したのは5月頭、晩春と言うより初夏に近い気候だったが、さすがは山の中。

社務所は雪囲いで覆われ、そこには残雪が残っていたし。

一方では桜が満開、里よりは一ヶ月ほど気候がずれてるらしい。


この時期まで雪が残るからには、降るときは大雪となるワケで。

本殿(重要文化財)は大雪により屋根が大破、無残な状態であった*3


それにしても美しい塔だな。

また今度、もう一度行ってみたいと思っている。


住所:養父市八鹿町石原1755-6
道路:妙見山宝物資料館という地点から先が林道、クネクネ細道をひた走る。途中の分岐は2ヶ所で、最初は左、次を右に進むこと(多分30分で到着するのは難しい人が多いと思われる)。

(2014/05/02 16:00〜撮影)

*1:屋根は瓦よりも檜皮、あるいは杮葺の方が美しいと思う。

*2:オレは基本的に朱塗りの建物は好まない。白木の方が美しいと思う。

*3:2018/03時点で本殿と拝殿の修復工事中、2020年に完工予定である。