屋久島(温泉の巻)

温泉マニアの人々からすると、屋久島は有名どころだろうな、と思う。
無料の、露天風呂で、しかも海っ端で景色サイコー♪ という温泉が2ヶ所もあるのだ。その魅力たるや推して知るべし、である。
何と言ってもタダなんだし!


オレはマニアではないが温泉好きで、旅行先によさげな温泉があれば、可能な場合は入浴することにしている。ただし温泉のために旅程を組むことはほぼ皆無、ルート上に温泉があれば『寄ってみるか』程度のものである。
ではあるが、屋久島のタダ露天風呂には、やはり惹かれるものがあった。まぁ入浴はムリでも、見るぐらいは行ってみるかな、と。
でもでも〜、ちょうど頃合いの湯加減だったら入ってもいいかな〜^^ ってか入っちゃうかな〜、やぁ〜多分入っちゃうだろうな〜オレ(^^) と言うことで、シッカリとタオル持参で行ったのである。要は『入る気満々』だったのだ^^;


で、湯泊温泉である。

さすがは有名どころ、レンタカーのナビにもバッチリ登録されていた。このひなびた感がいい具合である。しかも誰もいない、入るには絶好のコンディションだ。
しかし前回も書いたがこの日は雨、しかも2月、ちなみに屋久島は『南の島』ではない、『西の島』である。当たり前だが冬は寒いのだ。


念の為、湯に手を付けてみたところ・・・、
ぬる過ぎっ!

とてもではないが入れる温度ではなかった。よって断念。まぁせめて手でも浸けておこうかね、ピチャピチャ*1


と、オレがこんなんしている所に一台のレンタカーがやってきて、車の陰で何やらゴソゴソし始めたではないか。
『まさか、ねぇ?』と思うほどに60がらみのオッサンが全裸でこっちにやって来た。風呂目的なら全裸は当然だろうが、この状況でスッポンポンかよ? コレってもしや、オレが甘いってこと? 温泉道を極めてないってこと?

・・・そうかも知れない、オレはまだまだ甘ちゃんで、マニア憧れの温泉であってもヌルくてサムいと言うだけの理由で尻込みしちゃうなんぞ、ハンパ者の証なのだろう。でもオレ、温泉入ったのに湯上がりが冷えるなんてのはイヤだ。


ともかくオレは、このオッサンに注意喚起する義務があるんじゃね〜かと思った。「すっさまじくヌルいんすけど、もしかして入るんですか?」とオレが聞いたら、「もちろん」って入っちゃったよ、このお人!

まぁ全裸で颯爽と登場して、『ヌルいよ、サムいよ?』と言われたからって引き返したんじゃ、温泉マニアとしての彼のプライドはズタボロだろう。でも首まで浸かってから「寒っ!」だと。オッサン、カッコ悪いし。


『もしかして有名ブロガーさん?』とも思ったが、それにしてもこの人は大丈夫なのだろうか?
超ヌル湯、しかも時折の雨、さらには風がビュ〜ビュ〜吹き付ける2月の浜辺、・・・マニアにしてもねぇ・・・物好きってヤツはいるモンなんだなぁと納得して退散。やはりオレには、マニアへの道は険しすぎると痛感したのであった。


このようなドラマを残し、オレが次に向かったのは平内海中温泉である。
『海中温泉』と言うだけあって、ここは干潮時にしか入浴できない。本日の干潮時刻は観光案内所で聞いている、今はちょうど干満の中間ぐらいの時刻だ。

温泉はまだ水没中、多少は顔を出しているが入浴は不可能に近い、ってか絶対ムリ。手を浸すこともできぬまま、写真だけ撮ってオシマイである。

ところでここにもドラマはあった。ただし翌日の話とはなるが。


で、翌日談。
この日は9:30位から干潮とのことで、島一周の途中で海中温泉に寄ってみた。もちろん写真を撮る目的のみで。なぜってこの日は強風で肌寒く、よほどの酔狂でもなければ露天風呂なんぞ入るモンかぃ、という日和だったのだ。
ところが、である。平内海中温泉では、既にオッサン二人が入浴中だった。しかも三人目のオッサンは服を脱いでいる途中だった。さらにその上、ガイドのオネェさんに引き連れられた観光客が見物までしていた。
寒風吹きすさぶ海っ端、と言うか海の中。衆人環視でも平然と湯に浸かり、あるいは脱衣するオッサン。一体何なのだろうか。

ためらいがちにオレは聞いてみた、「寒くないんですか?」と。
すると脱衣中のオッサンは「そりゃ〜寒いけど、湯に浸かれば温まるから。でもまぁ、こんな日は温泉好きでなけりゃ、入れないよ」だって。


・・・なるほど。
つまりオレは『温泉好き』ですらなかったと言うことか・・・、脱力である。今まで『温泉好き』を自認していたが、アレは夢想、オレの希望的思い込みだったのだな。


でもオレ、いくら超有名温泉とは言え、寒い中我慢して観光客の好奇の目に晒されながら風呂に入るくらいなら、『温泉好き』と言われなくてもいいや。ってか、この場はスルーした方が『真っ当な人間』という気がするし。

ともかく、干潮で絶好の機会ではあったが、オッサン入浴中の写真を撮っても仕方なかったので、撤収した次第である。なんかビミョ〜に負けた感がある気がした。


ってのが、オレの見た屋久島の変わり風呂有名露天風呂だった。
でも屋久島には、キチンとした(!)まともな温泉もある。

こちらは楠川温泉。
平内海中温泉からすると、島のちょうど反対側辺りにある。

なんとも・・・な外観である*2
風呂はこんなん。

保温用のアルミマットが寂れた感を漂わす。
実はここ、正確には『温泉』ではなく『鉱泉』なのだ。25℃ほどの湧き水をボイラーで沸かして風呂としているため、冷めないように保温対策がされているのである。
でも蛇口をひねれば、熱湯が出てくるので、そこは全く問題ない。言わば『家庭の風呂』の水質アップバージョンといった感じだ。

この時の湯は若干温めだったので、時折湯を足しながらの長時間入浴が楽しめた。写真の通り、誰も来なかったので貸し切り状態でもあったし。
肝心の湯は可も無く不可も無く、クセのない湯である。特筆事項は洗い場の床と風呂の壁。床には丸石が埋め込まれており、どこぞでたま〜に見かける『健康足つぼコース』的な造りになっているのだが、これが素足で歩くとかなり痛い。また壁には平石が積まれているのだが、多分『背中ツボ押し効果』を狙ってのことだと思うが、これまた微妙に痛い。
ツボに当たる最適な位置を探せばあるのだろうが、モゾモゾ動きながら湯に浸かるのも面倒だったので、人がいないのを幸いにど真ん中横伸び入浴を決行した。とても行儀が悪かった、と思う。

ちなみに湯上がり後は、体がしばらくホカホカしていたが、それが湯の効能なのか、はたまた長時間入浴の結果なのかは判然としない。


最後はオレの一押し、尾之間温泉である。『おのあいだ温泉』と呼ばれているが、地元の人は『おねむだ温泉』と言う。おねむだの方がカワイイ響きだと思う。

ここは地区の共同湯であるらしく、地元の方々がひっきりなしに入ってくる。もちろん観光客もひっきりなしに来る。
ひっきりなしの合間を縫って、たまたま誰も入浴していない時の撮影に成功した。ちっとラッキーだ*3
・・・ひっきりなしとは言っても、一度に数十人が入浴するワケでもないが。オレの経験上、毎度少なくても3〜5人は入浴中、だと思う。


『毎度』と書いたのは、ここの湯が非常に気に入ったので、オレは屋久島滞在中の2日間に4回も入浴したのである。昼間に一度、そして寝る前に一度の日々二度風呂だった。
まず湯がスゴイ、ツルツルヌルヌル感が半端なく強い。入浴中だけではなく、体や頭を洗うと、そのヌルヌル感がいつまでも続くのだ。当然、湯上がりはスッキリさっぱりする。そしていつまで経っても体が冷めない、まさしく温泉の効能、である。

次いですごいのが、足下自噴の源泉掛け流し、新鮮な湯が次々に沸いてくるのだ。その上、掛かり湯や各自体を洗った後のかけ湯は、風呂から直接くみ上げて使用する*4。言ってみれば、掛け流しだけでなく汲み上げまで行って、常に湯の鮮度が保たれている状態だ。
なんとも贅沢な風呂だと思う。しかも、あれだけザバザバ汲み出している*5のに、いっこうに浴槽の湯が減ることはない。かなりの湧泉量なのだろう。

湯温は割と高め、なので長時間入浴には向かないが、出たり入ったりを繰り返せばいいのだな。あるいは水を溜めてある小さい水槽もあるので、そこから冷水をかぶる、と言う手もある*6

浴槽の底には丸石が敷き詰められていて、ちっとばかりゴロゴロするが、痛いと言うことはない。この石がどのくらい埋まっているのか気になったので、湯に浸かりながらほじくり返してみたが、かなり深くまである模様で底を見ることはできなかった*7


全体として設備は若干古め、壁はコンクリート打ちっ放し、床は石タイルだが、各自適当に場所を陣取ってそこに直座りで体を洗う。風呂イスのようなものは、なかったと思う。洗い場的なシャワーカランはあるが、オレの知る限り使っている人は皆無だった。
よく言えばワイルドだが、悪く言っちゃうとショボい。かなり素っ気ない設備なので、こうした点が気になる人には向かないが、オレはこれらも含めて気に入った温泉だった。なにしろ本来が地元の共同湯だし、『温泉入浴』が目的ならば設備なんぞにあまり意味を求めないし、オレ(^^) シンプルに湯を楽しむ、それで十分である。


こんなんで屋久島では滝にテンション上がりまくったが、おねむだ温泉にも感激したオレだった。
温泉であれば、雨の影響はほぼ皆無である。

(2018/02/10撮影)

*1:この時点で足湯も断念。雨のため一帯が濡れているから、座る場所なんぞなし。その上、寒いのに靴下まで脱ぐのイヤだったし。

*2:入り口のガラスに写り込んでいるのはオレである。心霊写真ではない^^;

*3:温泉の写真は、誰も入浴していない状態じゃないと撮影できないからね。

*4:シャワー設備もあるが、これは『頭を洗ったときのみ使うこと』と注意書きがされている。

*5:男女合わせて10人ほどが、常にザコザコかけ湯をしているのだな。

*6:もちろん水槽に浸かるのは禁止である。そのように但し書きもされている。

*7:もちろん元通りに戻しておいたヨ。良い子のお友達はマネをしてはいけないヨ^^;